モンゴル時代道教文書の研究

出版时间:2011-12-10  出版社:汲古書院  作者:高橋文治 著  
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内容概要

【序論 直譯風白話發令文の性格】より
『大元至元辯偽録』という本に記述されるある事件の経緯から紹介してみよう。モンゴル時代のはじめ、華北の開封にはまだ金朝政府があった頃、全眞教と呼ばれる道教グループの領袖に丘處機という人がいた。この道士は、劉仲録という人の勧めにしたがって、山東半島の突端部を出發して中央アジアを横斷、今の北京などを経由して當時ガンジス河上流域に駐屯していたチンギス汗を訪ね、彼から「税の一部を免ず」という特許状をもらって、北京にまた帰ってきた。チンギス汗のお墨付きをもらった全眞教グループは、モンゴルの勢力拡大にともなって華北では大きな力を有するにいたり、孔子廟や佛寺を占據して道觀にかえたり、権要にとりいって文書を偽造し、チンギス汗から許可された特許を拡大したりした。全眞教グループに對する批判は儒教側からもあがったが、最も重要で強烈だったのは佛教側からのそれだった。全眞教は四百以上もの佛寺を華北で占據していたといい、また『老子化胡經』と呼ばれる偽經、ならびにそれを圖像化した「八十一化圖」などを板刻して、佛教に對する道教の優位を誇示しようとしていた。一二五五年、モンゴルのモンケ汗の五年、カラコルムに佛寺を建立するために同地を訪れていた少林寺の住持福裕長老は、これらの事實をウイグル人學者安蔵(彼は中國語に堪能だった)を介してアリク・ブケ(モンケ汗の末弟)に訴え、アリク・ブケはさっそくモンケ汗に奏上、事實關係の確認がはじまった。以後、約二十五年にわたって佛教側と全眞教グループの小競り合いが續いた。これがいわゆるモンゴル時代の「道佛論爭」であるが、『大元至元弁偽録』とはこの「道佛論爭」の顛末を書き記した書物で、モンケ汗、アリク・ブケ、クビライ汗といった人たちが發したことばが中國語で記述される、實に興味深い書物なのである。
本書は、モンゴル時代の道教を思想史や宗教史の立場から考えるものではない。右に紹介した「道仏論争」の末尾でクビライの令旨を二通引用したが、本書が何より注目するのは、この二通に代表される王族の發令文や公文書の類である。モンゴル時代とは面白い時代で、それまでの中國であれば後世に伝えられるはずのない、少しかわった發令文、公文書の類が比較的多く、しかもかなり「生」な形で残されている。それらの發令文、公文書がいかなる文體で書かれており、いかなる内容であったか、また、それらの文書を仔細に検討した場合、従来読まれてきた編纂史料からは解らないどのような事實が浮かび上がるか、それらのことを考えるのが本書の目的である。

书籍目录

序 論  直譯風白話發令文の性格
第一章 全真教文書の性格とその展開
第一節 太宗オゴデイ癸巳年皇帝聖旨をめぐって
第二節 附論「孟廟丁酉年免差役賦税碑」をめぐって
第三節 クビライの令旨二通
第四節 李志常の給文碑
第五節 一二三八年から一二五二年へ
第六節 「大蒙古國累朝崇道恩之碑」をめぐって
第七節 張志敬の給文碑
第八節 余論「任風子」劇をめぐって
第二章 發給文書から見たモンゴル時代の道教
第一節 張留孫の登場前後
第二節 附論「宣諭釋教都總統」の出給文
第三節 至元十七年の放火事件
第四節 武宗カイシャンと苗道一
第五節 承天觀公據をめぐって
第六節 晉祠至元四年碑をめぐって
第七節 阿識罕大王の令旨碑をめぐって
あとがき・索引・重要引用文献表

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