「山月記」はなぜ国民教材となったのか

出版社:大修馆  作者:佐野幹  
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内容概要

高校教科書の最高掲載回数を誇る中島敦「山月記」が、「国民教材」の地位を獲得していくまでの秘められたドラマを解き明かしつつ、現在の国語教育が抱える問題を鮮やかにあぶり出す。高校国語教員、必読の書! 付録として、授業研究に役立つ「学習の手引き」調査結果、主題一覧、授業実践のヒント20選を収録。
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きわめてスリリング
本書は、「山月記」という教材を通して、教室の中における という営みが、如何に社会の文化状況と関わっているのかを解明したものである。「山月記」に関わる文学研究の成果を踏まえた上で、それを国語教育という社会的実践行為へと架橋していく。その手つきはきわめてスリリングである。教員ばかりではなく、広く一般の方々にも興味を持って読んでいただけると確信する。
府川源一郎(横浜国立大学教育人間科学部教授)

书籍目录

序・「山月記」の歴史の旅へ
本書の目指すところ/本書の構成および意義
第一章 小説「山月記」の掲載
1 「古譚」の中の「山月記」
2 切り離された「山月記」
第二章 教材「山月記」の誕生
1 検定教科書制度の成立と「山月記」の掲載
教材価値の今昔/「山月記」の掲載/
国定教科書と検定教科書との連続性/検定制度の内実
2 『中島敦全集』との関わり
漢文の人、中島/毎日出版文化賞/昭和二〇年代の出版界と毎日出版文化賞
3 読書指導と「良書」としての「山月記」
学習指導要領の概観/資料としての教科書/「付表 資料としての図書一覧表」/
「山月記」教材化と民主主義の模索
第三章 「山月記」の授業――増淵恒吉の「山月記報告」を読む――
1 テキストの仕掛けから
問題の発端/テキストが持つ仕掛け
2 「李徴」の「欠けるところ」をめぐって――増淵恒吉の業績とその授業――
先導者・増淵恒吉/増淵恒吉の「山月記」の授業/実施時期・対象・生徒観について/
報告内容と「課題学習」/「課題学習」とは何か
3 歴史的状況から――「国民文学論」と増淵の「生活」観
「国民文学論」/作品・教材重視の教育観――「人虎伝」との比較――/
「課題学習」の中に「生活」を組み込んだ例から
4 なぜ「人間性の欠如」としたのか――資本主義社会を支えるエートス――
増淵は「能力主義」か/「人間性」というキーワード/もう一つの目的/
「山月記報告」とは何だったのか
第四章 「現代国語」と「山月記」――主題・作者の意図への読解指導――
1 「現代国語」誕生とその目的
問題の所在/「現代国語」について/「現代国語」設置の背景/時枝誠記の意志
2 動揺する教師たち
「読解指導」への信奉/「現代国語」への反対意見/「現代国語」がもたらしたもの
3 教師用指導書のはらむ問題
「山月記」授業批判/「読解」の六項目
4 ドキュメント・指導書を用いた正解到達型の授業
正解到達型授業の実態/一方的な伝達の果てに
第五章 国民教材「山月記」の誕生――切り捨てるものと追求し続けるもの――
1 国民教材「山月記」の誕生
定番・安定・国民教材へ
2 国民教材としての「山月記」への批判
浴びせられる批判/批判の外的要因
3 「語り論」による「読み」の系譜
「語り論」の展開/相対化の学習へ
4 読者論や単元による「山月記」の授業
「山月記」と読者論/「石垣報告」以降の試み/高校国語教育の課題
第六章 「山月記」の音声言語とナショナリズム
1 「山月記」受容の新しい展開
メディアミックスへ/新たな「古典」としての「山月記」
2 音声言語教材「山月記」の可能性と問題
音声言語教育の「山」と「谷」/「音読・群読」の可能性/その問題点
3 近代学校教育が抱えるジレンマ
「日本語」ブームの背景/浮上するナショナリズム
終章 問題解決の糸口
モノローグ/ダイアローグと読書/文学・言語体験/今日的課題と私たちの世界
付録
1 「学習の手引き」調査結果
(1) 設問別頻度率の推移
(2) 頻出設問ランキング
(3) 主な設問と解答例
(4) 希少設問一覧
(5) 「現代文B」に見る新年度の傾向
2 教師用指導書「山月記」の「主題」一覧
3 授業実践のヒント20選
あとがき
索引

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