草にすわる

出版时间:2006-6  作者:白石一文  

内容概要

ロングセラー『僕のなかの壊れていない部分』で新境地を開いた著者の、覚醒の物語2編を収めた中編小説集。生きるための切実な理由を求めて会社を辞めた青年が、人生につまずき、そこからまた立ち上がろうとする姿を描いた表題作「草にすわる」。年老いて仕事への情熱を失った高名な文学者が、予期せぬ形で孫と出会うことで生命のありがたみに気づく「砂の城」。両作品とも「生きるとはどういうことか」という大きな問題をテーマにした意欲作である。
人生に行き詰まってしまったふたりの主人公に共通するのは、生きる意味ばかりを性急に追い求めてきたという点だ。その先にあるのは、「死ぬしかないような切羽つまった理由でもなければ、人は生きつづけるしかない」「所詮、生きるとはそんなものだろう」(「草にすわる」)というような諦念と無力感でしかない。生きることそのものを祝福することで生きる力を取り戻していく彼らの姿には、同じような袋小路にはまりこんでしまった人に向けた強烈なメッセージが込められている。
伝えたいことを前面に押し出す著者のスタイルをよしとするかどうかで、本書の評価は分かれる。だがそのどちらにせよ、過剰なほど理知的な文体を用いて、現代人の寄る辺なさを見事に浮き彫りにするうまさを認めないわけにはいかない。厳しい現実の中で生きる道をまっすぐに指し示す、冷たくて温かい不思議な味わいのある作品集だ。(小尾慶一)
「わたしのまちがいだった。わたしの まちがいだった。こうして 草にすわれば それがわかる。」
洪治は3年間と4ヶ月勤めた不動産会社を辞めた後、バイトをしながら食いつないでいたが、急性胆嚢炎を患い、いまは実家で無為な日々を過ごしている。彼女はいるが、その関係にも倦み始めている。閉塞した日常を壊すものは何もない。ある日、彼女から昔の不幸な出来事を聞かされた洪治は、彼女が貯め込んでいた睡眠薬を飲んでしまう・・・。 前作『僕のなかの壊れていない部分』が、ロングセラーとなっている著者の最新作。表題作に書き下ろしを含む覚醒の物語2編。

作者简介

白石 一文
1958年福岡県生まれ。2000年のデビュー作『一瞬の光』から注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

图书封面

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