出版时间:2005 出版社:海文堂 作者:Jack Ryalls 译者:今富摂子,菅原勉
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内容概要
使用する手段が何であれ、人間が意思を相手に伝えることを目的とする、いわゆるコミュニケーションの場においては、通常、意思を伝えようとする側と伝えられる側は分けて扱われ、これら二者の間を結ぶのが音声であり、文字であり、言語であり、一般的には情報という刺激ということになっています。この情報が相手に伝えられ、理解されて、初めてコミュニケーションが成立します。音韻体系を含む文法体系全体が話者と聴者に共通認識として存在することが前提であり、好きだとか可愛いという情報が相手に確実に伝わることが最優先であり、情報の内容が認識された後の受け手側の感情的変化の過程はここには含まれません。すなわち、言語学や音声学では、まず話者の大脳内(運動性言語野)において心理的実体としての音声あるいは言語が意識され、神経細胞により音声器官を刺激することによって、音声が産出され空気中に伝播されていきます。音声信号は空気の振動となって聴者の聴覚器官を刺激し、さらに内耳から聴神経を通って大脳内(感覚性言語野)に伝えられ、話者からの送信内容を理解する、というのが人間による意思伝達の簡単な図式になるでしょう。また、話者が自ら発した音声信号をフィードバックにより、話者自らも理解することになります。
以上のように音声によるコミュニケーションの仕組みについては、概ね、(1)音声の産出に係る生理的領域、(2)音声の伝播に係る物理的領域、(3)音声の知覚、認識、理解に係る領域、と3つに分けることが可能であり、多くの場合、それぞれの領域において単独的かつ専門的研究が行われています。
(1)は内省可能な面も幸し、ローマ・ギリシャの昔から哲学者たちの関心を集めてきました。また、(2)はコンピュータをはじめとする電子工学的機器類の発達により、本来瞬時的な現象に過ぎない空気振動を可視的な対象として捉えることが可能になり、近年最も研究が進んだ領域となっています。これらに比べ、(3)の領域は大脳の機能とそれに深く関係する心理学的な研究との協同的意味合いが強く、まだまだ未知、未開の部分が多く、これから大いに発展することが期待される領域といえるでしょう。
言語によるコミュニケーションに関する研究の歴史は古く、前述のように哲学、言語学、心理学、等々の分野で論じられてきました。最近は通信工学、あるいは情報工学の観点から情報の伝達に関連して、1つの研究分野に留まらず、複合的な形で研究が盛んになっています。とくに、「解る」ということの哲学的な意味は別にして、音声知覚、音声認識を手始めに認知言語学や認知心理学、教育工学的な観点から、さらに最近は電子工学的解析技術を駆使した大脳生理の可視的分析を通じて「解る」の解明が日進月歩の勢いで進められています。
言語学の世界では、1900年代半ばに生成変形文法の創始者として登場したNoam Chomskyの言語理論は、多くの点でそれまでの言語研究とは異なるものでした。言語理論に心理学的な視点が与えられ、従来ほとんど取り上げられることのなかった情報を受ける側、聴者の立場による言語研究が可能となり、要求されるようになりました。Chomskyの言語理論の影響は大きく、時同じくしてコンピュータの加速的発達もあって、刺激あるいは情報の受け手の側からの研究が急速に進歩したのでした。また、コンピュータの発達と関連のある医学、とくに大脳生理学の研究の成果が言語学や心理学の分野にも応用されることによって、受け手の心理状態がより具体的に分析され、解明されるようになってきました。
しかし、言語の受容に係る問題解明は、まだまだ端緒についたばかりと言っても過言ではないような状況にあり、今後ますます研究が深化していくことが期待されます。音声の認識に関する研究論文や著作物も年々数を増してきてはいますが、多くは限られた分野で、しかも研究内容にバラツキがあり、総合的な傾向を与えてくれるには到っていないようです。その意味でJack Ryalls博士による本書は、そのタイトルから入門的なレベルとして扱われがちですが、音声の知覚や認識研究の近年の動向を平易な形で紹介し、同分野に対する概論的なパースペクティブを与えてくれるものとして貴重な存在です。将来的な展望を与えてくれるコンパクトな概論書として、音声知覚に限らず音声一般を研究対象とする音声学、言語学、心理学はもとより音響音声学、言語障害学などの講義や授業用参考書として、最適なものといえるでしょう。
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