作者:藤崎 慎吾
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内容概要
♪海は広いなぁ大きいなぁ~
まあ子どもの頃に歌ったような記憶があるけど、まさにその通りである。
僕の記憶が正しければ、地球上の7割は海である。残りの3割である陸地に僕ら人間は生活をしている。しかもその地上にも、人の住めないところもかなりある。実際人間が占めている陸地面積は、地球上の2割とかではなかろうか。
人間は有史以来、とにかくありとあらゆる場所を開拓してきた。未開の土地を見つけてはそこに住めるように開拓し、そうして領土を広げていった。また勇気ある冒険家らが、北極や南極、あるいはエベレストやアマゾンなど、人が近づけないような奥地にまで足を伸ばし、もはや人跡未踏の地は地上ではほとんどないのではないかとすら思える。それでもちょっと前に見たニュースによると、まだ人間の手が入っていない広大な森が発見されたとのことである。まだまだ陸地も恐るべき広さを有しているということだろう。
さて海である。人間は海についてどのくらい知っていると言えるだろうか。
正直人間は、海についてはほとんど何も知らないというしかないのではないだろうかと思う。
海というのは本当に特殊な空間で、とにかく人間を寄せ付けない。陸地上のどこかであれば、生身の人間でもなんとかどこへでも行くことが出来る。多少防寒を重装備にしたり、あるいは特殊な知識を見に付けていなくてはいけないという程度のことだ。
しかし海というのはそうはいかない。
誰でも知っていることだけど、水圧というものが最大の障害になる。地上に生きる僕たちは普段1気圧の元で生活をしているわけだけど、海の場合、10m下がる毎に1気圧ずつ増していく。100m潜れば、そこは11気圧。地上の11倍の重力が掛かっているというような想像で大体間違いない。人間が素潜りでどこまでいけるのか知らないけども、しかしこの水圧といもののせいで生身の人間は深く潜ることは出来ない。
そこで潜水艇のようなものが必要になるのだが、深く潜ろうとすればするほど高性能の潜水艇が必要であるし、一回の潜水にも莫大なお金が掛かる。
海というのはそうしたわけで徹底的に地上の生き物を排除する世界であるので、人跡未踏の地などそれこそ山ほどある。未だにその存在すら知られていない生物だって無数に存在するだろう。深海など、光も届かず真っ暗な中で、しかもものすごい水圧という最悪な環境の中で、それでもそこに生息している生物はたくさんいる。中には、マグマによって暖められた熱水を放出するチムニーという突起物から出る硫化物を栄養分にして生きている種もあるらしい。もはや想像を絶する世界である。
だからそこにどんな生き物が生息していてもおかしくはないし、驚きはするけど意外ではないだろう。
大王烏賊という種類の烏賊がいる。いるらしい、ということだが、確か誰も生きている姿を見たことがないはずだ。というのも、時々恐ろしく巨大な烏賊の死骸が網などに引っかかるだけだからである。主に深海に生息する生き物については、その生態どころか存在すらも断片的にしか知ることが出来ない。
だからこそ、なるほど、未だに発見されていない恐ろしく巨大な鯨が生息していても、それはおかしくはないのかもしれない。
深海の生物と地上に生きる僕たちの生活が交わることはほとんどない。少なくともこれまではなかった。しかし、今後はどうなるか分からない。
海洋汚染などが指摘されることがあるけれども、人間の生活が海にどんな影響を与えているか分からない。また、なんとかっていう次世代のエネルギー資源と言われている物質を採掘するような動きも始まっている。また海には潜水艦などを初め、様々な人間の乗り物が行き交っている。そうしたもろもろの存在が、深海の生物にどんな影響を与えるか分からない。
人間はこれまで、自らの生を充足させるために、他のありとあらゆる種を無視してその存在を広げていった。その結果、自然を奪い、環境を破壊し、生態系を崩していくことになった。これだけ傍若無人な振る舞いをしている種は人間の他にはいないだろう。
深海に住む生物のように、他の世界には迷惑を掛けずにひっそりと生きていくことは出来ないものか。何だか人間という種がどんどん矮小な存在に思えてしまうのである。
そろそろ内容に入ろうと思います。
きっかけは、アメリカ海軍のとある潜水艦が任務中に遭遇した事故だった。およそ理解しがたい事故だった。乗組員の何人かが突然背中に寒気を覚える。誰かの悪戯というのでもない。そしてしばらくすると別の乗組員が鼻や耳から血を流して倒れる、あるいは頭を打ち砕かれて即死する。そんな奇妙な事故だった。その潜水艦はその事故により、乗組員の半数近くを失うことになった。
アメリカ海軍はこの事故の原因を探るために、<ロレーヌクロス>という名の海底基地に音響の専門家を一人潜りこませることにした。彼には一つの仮説があった。事故の原因になったのは鯨ではないか、ということだ。
一方で鯨の研究者として有名でありながら、同時に変わり者で厄介な研究者であることでも有名な須藤秀弘は、先日海底で見た巨大な鯨のものと思われる白骨を見て興奮していた。全体的にマッコウクジラに似ていたが、しかし明らかな差異がある。新種だろうか。
須藤はその調査の際いくつかのサンプルを持ち帰ったのだが、しかしある日そのサンプルが盗まれていることに気づく。
その後、アメリカに本社のあるとある製薬会社が須藤の元へとやってきた。世界中から優れた研究者を募り支援をしていくプロジェクトがあるのだけど、是非須藤を支援したい、ということであった。自社で保有している潜水艇も使わせてくれるということだったので、胡散臭さを感じながらも、須藤はそのプランに乗った。
こうして日本の研究者とアメリカの製薬会社のタッグと米軍とが時を同じくして同じ対象を調べることになったのだが、そこにさらに厄介な存在が噛んでくる。これまでその存在が知られることのなかった巨大な鯨を巡って、様々な思惑が錯綜する…。
というような話です。
本作は、全体的には梅原克文の「ソリトンの悪魔」に似ていますが、国際謀略という点では服部真澄の「鷲の驕り」の要素もあり、また潜水艦が目白押しの海洋冒険ものという点では福井晴敏っぽくもあり、また未知の生物との遭遇という点では有川浩っぽくもあります。そういう意味でなかなか豪華な本という感じがします。
なかなかの分量の作品ではありますが、それに見合ったなかなか重厚な作品でした。話としてはまあホント単純で、今まで誰も知らなかった馬鹿でかい鯨が見つかったよ~、というだけの話なのですが、そこに様々な物語を組み合わせて見事に面白い作品に仕上げています。
「大マッコウ」と名付けられるその巨大な鯨の生物学的な設定もかなり緻密で、驚きました。全体的にそうした緻密さみたいなものが行き届いていて、大学時代にそういうことを学んだというのもあるのでしょうけど、とにかくリアリティみたいなものは圧倒的なものがありますね。
またそれだけでなく、鯨との緊迫した攻防であるとか、孤立した<ロレーヌクロス>からの脱出は出来るのかというような極限状況、またテロリストの存在など、物語をいやがおうでも盛り上げる要素が盛りだくさんで面白かったです。
何だかんだ一番面白かったのは須藤という主人公のキャラクターで、極限状況でものらりくらりとした対応をする様は、なるほど研究者というのはこういう人が多そうだなと思わせるものでした。潜水艇の女性パイロットとのやり取りも面白くて、知識だけではなくそういう人間的な部分まで含めてうまく描いているな、という感じがしました。
個人的な不満を言えば、もう少しその大マッコウが謎めいた存在だったらよかったのにな、と思います。梅原克文の「ソリトンの悪魔」や有川浩の「空の中」くらいまでとは言いませんが(あそこまでいくと完全にSFになってしまいますが)、でももう少し不可思議な存在に描かれていると魅力的だったかなとも思います。まあ現実的なリアリティを優先したように思える作品なのでその点は仕方ないのかもしれないですけど。
読んでいて、本当にこんな生き物が深海に存在していてもおかしくないな、と思いました。なかなか圧倒的な物語であると思います。海洋冒険ものが好きだという人は是非読んでみるべきでしょう。いやでもパニックやサスペンスなどいろんな要素があるので結構多くの人が楽しめる作品になっていると思います。是非読んでみてください。
藤崎慎吾「鯨の王」
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