彼女が演じた役―原節子

出版时间:(1998/09)  出版社:早川書房  作者:片岡 義男  
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内容概要

片岡義男はこの本を書く以前に、「紀子が三人いた夏」という小説を書いた。原節子が主演した小津の『晩春』『麦秋』『東京物語』の三つの映画について、女ともだちと語りあうという小説である。
原節子は一般に、「東京の山の手の、中流より上のいい家の、大輪の花のような美しいお嬢さん」と受け止められている。ところが氏は彼女のなかに、「性を使うことに不安や恐れを抱いている女性とはまるっきり正反対のイメージ」を見いだす。
「小津の映画について語るとき、見落としていけないもののひとつは、身も蓋もない性的な主題だ」と片岡義男はいう。
「そうかしら」と「そうよ」の対置、これが『晩春』の主題だという。この指摘はなかなか鋭い。「そうかしら」は未婚の女性の世界。「そうよ」は人妻の世界。いうなれば、性の使用前と使用後。
原節子という女優が「そうかしら」の世界にあって、いかに深い性的なイメージを演じているか、氏は、映像のなかの演技や声の陰影に注目し、それを言語化してみせる。そして、これまで彼女を起用した監督たちが、彼女のこの「性的なイメージ」をどのように表現したか、あるいは表現しえなかったかを分析する。
片岡義男は同時代的に日本映画を見ていない。そのために余計な夾雑物をはさむことなく、原節子という女優を実感で掴みだすことに成功している。

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