異邦の騎士

出版时间:1990-11-5  出版社:講談社  作者:島田莊司  
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内容概要

ふと目覚めると、「俺」は公園のベンチに寝ていた。記憶をたどってみるが、何ひとつ思い出せない。自分はいったい誰なのか? 名前は? どこから来たのか? すべての記憶が失われていると解り、驚愕する。
途方にくれ、記憶を探りながら街を行く男の目に映るものは、行き交う人も、街角も、まるで見知らぬ異郷だ。絶望の街角で、「俺」は石川良子と名乗る若い女と出遭う。彼女は何かに苦しみ、誰かの助けを求めていた。そして男もまた、この得体の知れない女にすべてをゆだねるしか術がない。
誘われるまま、彼は良子の引越しを手伝い、二人はそのまま元住吉の小さなアパートに棲みついて新生活を始める。記憶を失くした男にとり、それ以外の選択肢などはなかったし、謎めいた良子もまた、過去を忘れたがっていた。
過去のない二人の、異郷での甘い暮らし。けれどいつしか生活は、不安の予兆にとらえられていく。底知れぬ焦燥感、疑惑が男を充たすようになり、絶えられなくなった彼は、ある日、隣り町綱島で見かけた「占星学教室」の看板を訪ねて、御手洗潔と名乗る、これまた不思議な男に出遭う。
奇妙で風変わりなその男は、しかし一種独特の魅力で「俺」をとりこにする。以来何もかもなくした男の、彼は異邦の地での唯一の友となる。
しかし、失われた過去の記憶が徐々によみがえりはじめ、それらの断片は、次第に戦慄の「事実」を語りはじめる。そしてついに男は、自分が以前に書き留めていた日記を発見してしまう。
「俺は最愛の妻と娘のため、復讐の途上にいたのだ!」
男はすべてを思い出し、絶望への傾斜にみるみる足をとられていく。愛する妻子を殺した男とは? そして良子の正体は何者?
「良子の思い出」というタイトルで、あの「占星術殺人事件」よりも先に書かれていた幻の名作。作者にも忘れられ、長い間書斎に眠っていたこの作が、登場するやたちまち人気ナンバーワンの座に駈けのぼった、涙の傑作。

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